私が所属する日本生産管理学会と標準化研究学会では生産に関する出版活動を行っています。
昨年末から月一回の研究会の会合でスケジューリングしているのは「現場の管理と改善講座」シリーズ本の改訂作業です。
 私はその中の「不良低減」を担当しています。 一言で不良の低減を表現することは困難です。
不良が発生する原因が設計品質か製造品質に起因するのかで異なるからです。
現行の論点は主に製造品質について述べています。つまり管理が主体です。
しかし、シリーズ中には日常管理や目で見る管理などがあり、製造品質の管理については十分述べられています。
私が実務で苦労してきたのは、実は設計品質の悪さがあたかも製造品質の管理の失敗のようにされてきたことです。
 そこで、不良低減の改訂作業では設計品質から説明しようと思いました。
たとえ話で申し上げますと、たいへんな惨事を引き起こした福島第一原発では何故津波の想定を間違ったのでしょうか。地震を市場で商品を買うお客様とすると、耐震性能はそのお客様に見合った商品と成ります。どんな地震が来るのでしょうか?揺れの強さは、揺れ方は?津波は?地割れ、液状化とお客様の要求を想定して対応していかないとクレームが発生します。東電は津波の大きさは想定外で仕方がなかったとしています。しかし、過去の史実を調査すれば想定が間違っていたのではないかという事実が最近になって報道されています。
 企業のおける設計品質ではこのような場合は設計ミスとしてカウントされますね。
東電は設計責任ではないとしています。悪いのはお客様だと。。。。
勿論、市場の全ての要求に応える為の想定は、コスト高となって市場の競争力を低下させます。
企業は市場での信頼を失わない程度のクレームを覚悟して設計品質を決めていきます。
 しかし、企業が市場から撤退するほどのクレームは許されないことは当然です。東電はその意味で、全く設計品質の管理が出来ていなかったことになります。

設計品質でもう一つ問題になるのは、工程能力を無視した規格の設定です。お客様の要求をのみすぎたためにムリな設計をしてしまうことが有ります。これは工程内不良を増加させます。

 設計は段取り八分と言う格言そのままです。ここで如何に品質を作り込むことを検討するかによって不良の発生形態や発生率が変わってくるのです。
今回はこの関係をかなりのページを割いて説明しました。おそらく、不良低減を扱う書籍の中でこの論点を重視して説明してる本は私の記憶にはありません。
 日本の製造業は、現場力が高いと言われてきました。しかし、現在日本の製造業の現場では日本人の姿は少なくなっています。
偏見はいけないですが、実態はやはり派遣労働者の質はばらつきが大きいです。優秀な人も多く見受けられます。しかし、明日をも知れない身分でその所属する企業の事を考えて居る余裕はありません。安定した雇用関係で企業に所属する正社員の意識レベルにはなかなか成らないのは経験からも分かります。私がT紡績会社で行った方法ではかなり近づけられましたので企業側の問題が大きいのですが。

改訂版と言っても殆ど作り替えてしまったため、出版社の日本規格協会さんには大変ご迷惑をおかけしました。特に共執のH先生は出版社に席を於かれていますので、随分ご迷惑をおかけしました。
何とか先生や各方面の方のご助力の下、発刊にこぎ着けそうです。感謝致します。(´∀`*)