先回、日本企業は自社規格と自社品質管理が優秀であり、その為に外部の規格制定機関を無視して、結果として、調達コストを上げてしまっているのではないかと指摘しました。
 自慢話に聞こえたら恐縮ですが、Tier3の立ち位置にある当社では、大手
Tier2からエンジンセンサーの重要部品の一部を担当しています。
世界のシェアの90%以上を確保しており、日本の企業向けよりは世界の企業向けに出荷をしています。
 先月ドイツの大手メーカー数社が来社して工程監査を行いました。最近外国企業もよく監査や見学に訪れます。評価いつもほぼ満点に近く満足して頂いています。
日本の自動車メーカーの規格に合致させるためには、品質コストを掛けて維持管理していますので、正直言って世界中の自動車メーカーから来られても、要求に乗り越えられるだけの実力は出来ています。
当社はTS16949は中国にある工場は取得していますが、国内工場は取っていません。
Tier2からは新製品の生産準備ではほぼTS16949のフォーマットに則って確認作業を求めて来ます。
実質取っているようなモノです。 
 この数年日本の大手自動車メーカーの一部から、有る部品の規格変更の動きがあります。実は制定発令は既にされていますが、供給する部品メーカーが付いてこられない状態です。ただし、この規格に合致させれば、その部品メーカーの当該自動車メーカーにおけるシェアが劇的に増えるはずです。各社しのぎを削っています。その部品は汎用部品ですから当該自動車メーカーの車両にも大量に使用されます。開発コストは元を引くはずです。シェアが取れれば。
 もし思ったようなシェアが取れない場合は、当該自動車メーカー以外に販路を広げなければなりませんが、果たしてそこまでの品質を世界中の自動車メーカーが要求しているでしょうか。
当該自動車メーカー以外は、その部品は中国ローカルメーカーからも調達可能なモノですし、実際に欧州のメーカーは調達しています。とてもコスト競争力は有りません。品質はずば抜けていてもです。
 さらに、この規格のお陰で、当該自動車メーカーへは中国ローカルメーカーの部品はとても使えない状況です。国内企業で当該自動車メーカーの新規格に合致して認定を受けた部品しか使えなくなりました。当該自動車メーカーのコスト競争力やグローバル調達力を遠巻きながら心配しています。
 おそらく、この新規格に付いてこられた部品メーカーで寡占化をされて、調達コストは思うように下がらないでしょうね。 この件に限らず、実は他の件でも当該自動車メーカーの規格とコスト要求に付いてこられず、引き受ける
Tier3がなくて困っているTier2の話を聞くことがあります。
 当社でもこの新規格の保証をTier2が求めて来ていますが、Tier3の立場で保証する規格ではないため拒否しました。Tier2はでは新製品は出せないと通告してきましたが、それを飲むと利益どころが規格対応費用で大赤字必至です。保証に要する費用の売価への転化を認めて貰う交渉は決裂。 Tier2は他を当たりましたが、何処ももっとレベルは低い状態です。そもそも当該自動車メーカーの規格を理解する事も出来ません。
 その為、Tier2は自社で保証すると量産直前で変更してきました。その間の量産試作は全て当社に発注がでています。今後このTier2はどうするんでしょうね。勿論当該自動車メーカーへ価格の転化は出来ないでしょうから。
 実は当社は、そのトンでもない規格を世界標準にして貰えれば、中国などのローカルメーカーの安いが品質は・・・を駆逐できます。中国ローカルメーカーは欧州の環境規制もクリヤーしない状態ですが価格は圧倒的に廉価です。まず付いてこられないでしょう。しかし、当該自動車メーカーの規格はその企業のノウハウがふんだんに入っていることは、規格を見れば明らかです。 公開するはずが有りません。これを自社製品が他社と差別化が出来たと喜んで良いんでしょうか。

自社の土俵で相手を戦わせると言う戦略眼に掛けているように思いますね。

では また。